2024/10/16その他
<生産者との取組み> 北海道十勝産小豆エリモショウズ その2
前回のレポートはこちら https://www.eitaro.com/news/other/20240621/2049/
秋の収穫の時期がやってきました。美味しいものがこの季節、たくさん集まります。和菓子にとって欠かせない原料の一つ小豆です。榮太樓が「エリモショウズ」にこだわる理由は、香りの高さと風味が強いところで、炊くと実がホクホクとなり、理想のつぶし餡に向いているからです。収獲を終えた小豆畑には翌年同じ作物を植えることができません。失った栄養素を他の作物で補いながら、年数をかけて土に還していくからです。通常の小豆は4年の輪作期間ですが、エリモショウズは倍の8年かかり、とても手間がかかる稀少な品種なのです。
10月上旬、澄んだ空気で広大な十勝地域は見事な青空に包まれていました。晴天がしばらく続き風が強い日を「とかち晴れ」と呼んでいるようで、秋から冬にかけて風が収獲の手伝いをしてくれると言われているようです。今回はビーンズ倶楽部に加入している生産農家さん、そこから契約栽培をして小豆を仕入、販売している豆卸売業の㈱山本忠信商店さん、十勝農業試験場へ訪れ貴重なお話を聞いてきました。
「今年の小豆は二次成長が昨年と違い収穫は良かったがやや小粒。小豆の作り方がどんどん難しくなってきて毎年同じように出来なくなっている。作物は毎年が一年生で、どれだけ生育期間を増やすかが重要」(音更町 柴田農場代表 柴田直人さん)
「小豆の鞘は下からどんどん伸びていき、三段くらいになる。一番下の鞘は例年通り芽が出たが、二段目以降の成長がやや遅かった。そのため収穫時期になると二段、三段目の豆の色が不揃いで、上を待ちすぎると一段目の豆は黒く変色してしまうため、時期を見極めるのが難しい」(豊頃町 山崎農場代表 山崎浩道さん)
「小豆を収獲する時に使う農機具で巻き採る際に下部分の小豆が畑に撒き散らかされ、その散らばった豆が土に還り翌年輪作で違う農作物を植えたところにまた生えてきます。それを『野良小豆』と呼んでいて、これが除草剤も効かないんです。またここ10年で農薬や肥料、農機具の価格高騰も倍近くになっているのが悩みです。」(幕別町 七島農場代表 七島大さん)
「今年の小豆は粒が小さい。年々気候も変わってきているので種まきの時期を遅らせて暑い時期をずらして調整するか迷う部分はある。昨年は収穫時期にまだ葉が青々としていて落ちずにいた。水分値がやや低く乾燥しているため実が割れないかかなり神経を使って低速で作業をしています」(更別村 仲川農場代表 仲川和博さん)
ここからは写真とともに十勝地域の概要をご覧ください。
▲乾燥して褐色した小豆の鞘。鞘は下から三段くらいに伸びていくので豆の色は上段と下段では濃さが違います。
▲小粒気味ですが粒揃いのエリモショウズ。色が鮮やかで赤いダイヤと呼ばれています。
▲小豆のほかに長芋畑がありました。その高さは2.5mほど、見事な長芋畑。関東では見られない光景で新鮮です。
▲ちょうどタイミング良く小豆収穫中に訪問し、現場を見せていただきました。
▲絡み合った小豆の鞘をどんどんコンバインが刈り採っていきます。
▲コンバインの下はこうなっています。鋭利な円盤の刃が回転しながら刈っているのです。
▲作業中に訪問した小豆農家の仲川和博さん。広大な敷地をご家族三人で経営されています。訪れた小豆畑は端から端まで収獲にかかる時間は1週間ほどかかるそう。
▲十勝地域は広く、様々な地形があります。このように平地ではなくうねるような段々坂の畑でも小豆の品質は一定のようです。意外でした。
▲契約栽培の生産者さんより納品された小豆はまず水分値を計測してから石や泥、草などを取り除いて選別されていきます。
▲手選り(てより)作業。機械で除去しきれなかったものを人の目で最終チェックして袋詰めされ完成していきます。やはり最後は人間の目なんですね。
▲最後に北海道川西群芽室町にある十勝農業試験場で今年の作付け状況や今後の展望などをお聞きしてきました。
▲験場敷地内にあるエリモショウズの記念碑。現在品種では一番歴史が長く、北海道小豆の安定生産、品質向上に大きな功績を残した記念に建てられたようです。
昨年の令和五年度産小豆はここ5~6年、北海道の気候変動もあり高温な日が続き不作の年だったと言われています。昨年との違いは最高気温が同じでも8月以降、昼と夜の寒暖差があったことで平年並みの収獲量となりました。しかし出来はやや小粒傾向でした。現在北海道の小豆作付けは日本一ですが、その中でも十勝地域の占有率が約70%です。小豆に適した土壌や気候が道東地域には向いていますが、最近ではだんだん内陸よりも涼しい海沿いへ南下しているという。小豆の作付け品種はきたろまんが50%、エリモショウズ20%、その他にきたのおとめ、大納言などがあります。今回現地を訪問し、大地や土に直接触れながらリアルな話が聞け貴重な体験でした。生産者さんも口を揃えていたのは切実な肥料や農業器具の高騰です。その苦労を抱えながらも毎年私たち和菓子屋のために小豆を生産してくれている皆さまには感謝しかありません。2日間広大な十勝地域をアテンドしてくださった山本忠信商店さん、生産者のみなさま、ご協力ありがとうございました。今回訪問できなかった生産者さんに会いに、またこの地を訪れたいと思います。
広報部