2025/02/06その他
<生産者との取組み> 栃木県宇都宮市いちご「とちあいか」
いちご「栃木県産・とちあいか」
栃木県宇都宮市平出町「株式会社ハート&ベリー」
毎年冬になるとやってくる「いちご大福」は20年来変わらない人気の商品です。そのいちご大福に使っているこだわりの「苺」は栃木県宇都宮市平出町にある「ハート&ベリー」さんのものを使用しています。ヘタの根まで真っ赤に完熟していて、さらに実もしっかりとした「とちあいか」。毎年仕入れを行っている農家さんには必ず足を運び、直接会って生育やいちごの作付け、苦労話など伺いながらコミュニケーションを深めています。今年も代表の野口圭吾さんにお話を伺ってきました。
▲ハート&ベリー代表の野口圭吾さん
榮太樓總本鋪がハート&ベリーさんと取り組むきっかけとなったのは今から5年前の2020年夏頃。野口さんの苺を使用するまでは色々と問題がありました。普通は一般市場に流通する苺は早摘みされることでヘタ部分がまだ白く、実の硬さや大きさも不安定でまばらでした。また苺が完熟していても実が柔らかく苺から出る果汁が餡や餅に移り緩くなることで味が劣ってしまうことが最大の課題でした。せっかく美味しいいちご大福にはもっとこだわりを持ちたい、そんな思いから理想のいちごを探していたところ、繋がりがあった方に野口圭吾さんを紹介していただき、当社の工場見学にお越しいただいたことがきっかけでした。それ以来、翌年の2021年(令和3)1月の製造よりハート&ベリーさんの苺を使い全面的にいちご大福をリニューアル発売しました。それまで使っていた苺は包む前に選別する段階でロスが3割ほどあったものから、変えて間もなくほぼロスゼロに近いほど改善に繋がりました。ロス改善だけでなく、真っ赤に完熟しても実はしっかりして果汁漏れしない高品質の苺を作る生産者さんの顔を出すことで、「安心・安全」を消費者に伝えるこだわりのいちご大福が生まれました。
▲左側が以前の苺。右側が野口さんの苺。赤さの違いが一目でわかります。
今年の生育状況を伺うと、昨年夏の猛暑が大きく影響しているようで、「苺の苗を植えてもすぐに枯れてしまったり、根が伸びない、病気が発生する」など農家を悩ませる種はつきない様子でした。一昨年2023年も同じように夏は猛暑でしたが、昨年の同時期と比べても今年の生育は遅いそうです。「昨年の今頃は生育が遅れていましたが今頃にはピーク期に入りました、しかし今年はまだそこまで追いついていません。間違いなく昨年よりも収穫量は減りますね」と野口圭吾さんは深刻に話します。また品種について伺うと、栃木県として力を入れている新品種「とちあいか」は間もなく作付けは8割を超える勢いで浸透しているとか。かつて1996年に女峰の後継品種として生まれ長年牽引してきた「とちおとめ」の作付けは2割ほどに減少していると言います。今となっては「とちおとめ」も稀少な品種となりつつありますね。苺は完熟すると実が緩くなることが多いですが、当園の苺はそうではありません。どうしてこれだけヘタまで真っ赤なのに、実もしっかり硬くて濃厚なのでしょうか。その秘訣を野口さんに伺いました。「当園の苺は完熟してもしっかりと実が硬く日保ちがします。その味は甘いだけでなく、ほど良い酸味とのバランスが絶妙で芳醇な香りと濃厚な味、ヘタの根っこまで鮮やかな赤であることが特徴的です。他の農家さんは1~2種の肥料を使っていますが、当園は6種の肥料を混ぜて使用しています。大変手間と時間がかかる作業なのでここまで多くの肥料を使っている農家さんはまずないと思います。」と語ります。独自の栽培方法の中にはハマグリやシジミなど貝類を抽出したアミノ酸は苺をよりフルーティーにさせ、メインである昆布やカツオから抽出したアミノ酸は「濃厚さ、香り、赤さの表現」に繋がると言います。また電解水からなる酸性水は殺菌力があり、減農薬にも繋がるようで野口さんが目指す「安心・安全・高品質」の美味しい苺づくりへの情熱が垣間見えました。ここからは写真とともに内容を紹介していきます。
▲ハート&ベリーさんの苺ハウスは全部で28棟、総勢8名で作業されています。高設ベンチは土耕栽培と違い立ったまま苗植え、摘み取り作業出来るので肉体的にも優しい栽培方法のようです。
▲ベンチ内には土耕栽培と同じように土があります。栄養素が必要な部分にしっかりと行き渡り長期的に安定収獲が出来る様です。
▲高設ベンチの下にはミツバチの巣箱。働きバチたちが苺の花の周りに受粉してくれるおかげできれいな円錐型が定まるよう。ミツバチなくしていちごづくりは出来ないと言います。
▲ミツバチのおかげでこのようにきれいな円錐型が保たれます。
▲夕方になり気温が下がるとハウス上部より地下水が放水されます。栃木県は地下水が豊富で一年中15℃をキープするとか。冷え込む朝方まで放水することでハウス内を常に8℃に保つことが出来る様です。
▲6種の肥料タンクの仕組みや特徴、電解水などを説明する野口さん。今もその研究は尽きないようで継続中とのこと。さすがです。
▲ハート&ベリーさんの直売店。とちあいか、とちおとめ、ミルキーベリーなど栃木のいちごがたくさん売られています。
▲栃木県庁より「生産量日本一50年記念」で建てられた苺の顕彰碑。1968年(昭和43)より50年以上連続生産数日本一とは凄い記録です。さすが「いちご王国とちぎ」ですね。ヘタが長いのはまだまだ上を目指すという意味があるようです。
最後に野口さんの今後の展望と最終目標を伺いました。ズバリ「東京進出」。その前に昨年11月に移転した現在の地を拡張する予定で、「いちご狩り」もやって観光地化させたいと話してくれました。昨年から構想中の東京進出は、自然豊富な地で採れたての美味しい苺をもっと多くの人に届けたい、インバウンド対応として外国人観光客にも苺の美味しさを知ってもらいたい思いがあるようです。当社もその苺を使って、もっと多くのお客様に生産者の顔とこだわりを伝えていきたいと改めて強く感じた次第です。
▲実のしっかりした完熟いちご、北海道産小豆の半小豆あん、歯切れの良いもち米マンゲツモチを使用した三位一体のいちご大福。絶妙なバランスをぜひお楽しみください。
広報部