2025/03/08その他
令和7年春、 映画「和菓子」のリニューアル
半世紀以上前に公開された映画をもう一度見るために、
そして、多くの方々に見てもらうために、
現代版リニューアルプロジェクトを始動しました。
昭和40年、夏。一本の映画が公開されました。タイトルは「和菓子」。26分ほどの短編ですが、非常に高い評価を受けて国内外の賞を9つ受賞。10ヵ国の外国語版も作られました。内容は日本の菓子の歴史や進化を映像とともに解説した、いわば菓子文化の記録映画です。本編の中では様々な菓子が紹介されます。それらの菓子は一つの菓子屋の商品だけではありません。また、製造シーンも多数ありますが、やはり一つの菓子屋だけではなくて多くの店のそれぞれの職人らです。優れた職人や店の主らが登場して鮮やかな手業を披露しています。30分弱の中に日本の菓子文化の成り立ちとともに全国の菓子屋の魅力がふんだんに盛り込まれています。映画「和菓子」は、企画が榮太樓總本鋪、製作が桜映画社。1965年の公開でした。
初公開から60年後の今。この映画を現代の和菓子ファンにもぜひ見ていただきたいと私たちは思います。そこで、桜映画社さんの協力のもと「和菓子」の再編集を開始。変更する点は、映像(35mmフイルムからの4K化)、ナレーション、音楽など。60年前のフイルムと今とでは使うデバイスも含めて視聴スタイルが異なるのでそれに合わせて調整が必要になります。できるだけ多くの皆様に楽しんでいただけるようにとの思いで進めています。その作業の一つをご紹介いたします。
「4K化」
2月某日、都内某所。映像の4K化作業を見せてもらうために現場にお邪魔しました。ご一緒してくれたのは桜映画社様と記録映画保存センター様。榮太樓二名とともに現場責任者の方に案内されてスタジオへ入ります。明るいエントランスに比べると中は真っ暗ですが、やがて目が慣れてくると普段はお目にかかれないような編集機材がズラリ。あまりパシャパシャやるのはまずいかもと思い確認すると「撮影OKですよ」とのありがたいお言葉。遠慮なく撮らせていただきました。
左側の円盤状のものに35ミリフイルムがセットされています。スキャニングされて右側のモニターに映し出されています。1フレームごとに画面を取り込んでいきます。ちなみに4Kスキャンでは1分でデータ量が50GB(ギガバイト)にもなります。
4Kの読みは「ヨンケー」。簡単にいうとハイビジョンの4倍くらい画質が良い。だから大きなモニターで見れるし、近距離でも粗さが気にならない。60年前のフイルムは経年劣化により退色が進み、このままでは上映できません。そこでデジタル技術を駆使して撮影時の姿に戻す作業をします。工程の名称でいうとカラーグレーディング。
オリジナル(映像)の良さを大切にしながらも適切な補正を加えていきます。熟練のスキルが発揮される、まさに職人芸。こちらの質問にも画面を指さしながら丁寧に教えてくれました(ありがとうございました!)。
画面には職人が作る上生菓子「紅葉」が大きく映し出されています。煉切りのぼかし部分も鮮明に見えています。4Kの技術、本当に(すごい‥)と思います。
映画の本編が終わった後に流れるエンドロールを見ると「とてもたくさんの人が関わっているのだな」と感心するのですが今回のスタジオ見学の感想もまさにそう。それぞれその道のプロフェッショナルが自分の持ち場で良い仕事をする。その集大成として一つの映画作品が出来上がる。完成するのが今から楽しみです。
映画「和菓子」のレポートはこのあとも続きます。
それでは。次回もお楽しみにしてくださいね。
広報部